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「とりあえず、どうしようか……」
私は食材集めから帰ってきたはいいものの、この途中で拾ってきた三人をどうしようかその考えに追われていた。急がないと食堂がオープンしてしまう(こうしている間にもエントランスには数人の常連客が来ている)というのに、こんな関係ない話題でつまづいてはオーナー失格だ。さて、ほんとうにどうしようか。
「……いやあ、なんとかたどり着けたな。アスナ」
「まさか出口そばにお店があるとは驚きですね。クラウド・ビギニングより街が発達しているのでしょうか」
「そうだろうな、にしてもまさか第四層までラビリンスが続くとは思ってなかった……」
後ろで三人は、なんだかひそひそ話していた。感謝しているなら手伝って欲しい。
「……そうだ。あんたのこと、手伝おうと思うんだけど」
その言葉を聞いて、私は思わず体を止めた。嘘、マジで? なら超ラッキーなんだけど?
「え、いいの?」
「いいも何も、あんたはオレらを救ってくれた、謂わば命の恩人だ。それに感謝の気持ちを示さないとダメだろ?」
「ああ……そうなら、いいわ。それじゃ、店番してもらっていい? 注文きたら私に知らせて」
「オッケー……ってマックスコーヒーがなんでここにあるんだ?!」
「美味しいでしょう? 千葉県民の血液よ。血液」
「嘘付けー! コーヒーより練乳が成分的に多いもののどこがコーヒーなんだー!」
なんでこの人キレたんだろう? 人それぞれだと思うんだけどなあ。少なくとも私はこれはカフェオレだとおもってるけど。
「……ぐむむ、カフェオレならいいや……」
なぜか納得しちゃった。地味に可愛い。薄い本作られてそうなレベルで可愛い。
「……取り乱してすまなかった。ところでオレの名前を言ってなかったかな」
そういえばそうだった。
「俺の名前は……呼子龍樹。ココって呼んでくれ」
そのとき――私はまだこの第四層で起こる大きな出来事について――知ることもなかった。
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