第四層 ギルド・スキュア

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 すげえ本気だなあ、とか思いながら俺は読み進めていた本をまた読み直すこととした。  エーテル・ラビリンス基本理論。  これは一番目にここにやってきた人間の一人に学者がいたらしく、その学者が執筆したものとサチは言っていた。お気に入りにしてくれる人が本を置いていくらしく、その本を彼女は律儀に保管していた。そして彼女の許可を得て、それを読んでいるわけだ。  エーテル・ラビリンス基本理論、即ちこの迷宮の全てが書かれたものだ。しかし、これが書かれているならば、もうすでに殆どの人間が脱出していることだろう。だが、何故?  答えは簡単だ。――それが嘘だと思われているから。  エーテル・ラビリンス基本理論はその完璧さから当初こそはそれを『攻略法』として、プレイヤーに希望を与えた。  しかし、事件は起きた。  ある区域で突然ラビリンスシステムの変遷が起きていた。つまり――攻略法が通用しなかった。  学者が書いたこの本はまたたく間に信用を失い、人々は希望を失った。しかし、俺には解らない。  まだ、何かあるはずだ。この本には、まだ誰にも解き明かされていない、その学者しかわからない何かがあるはずなんだ。  読み進める。第一節『エーテル・ラビリンス序文』。エーテル・ラビリンスについての概要だろう。この本はラビリンスについての考察の他に、マスターについての考察もある。エーテルラビリンスとマスターは切っても切れぬ関係であるだろう、と学者は考えていたようだ。
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