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扉をくぐってみたのだが、ついに訳の分からない状態になっていた。
まあ、簡単に言ってしまえばそこは小さな街だった。上を見上げると、空がある。紛い物の空か、それとも本物の空なのかははっきりしない。それでも、そこには街があった。
そして、その街の中心には天を突き抜けるほどの巨大建造物が見えていた。
「……ここは、なんなんだよ……」
ふとまわりを見渡してみると俺以外にも人間がこのラビリンスとやらに迷い込んだらしく、人間がちらほらいたので、適当な人間に声をかけてみることとした。
「ちょっと、そこのあんた、聞きたいことがあるんだけど?」
「あ、どうした?」
顎に無精髭を生やした気前のよさそうな男だ。顔は適度に優しさのオーラが滲み出るような肉の付きで、ああこんなヒトが実際に近くにいればよかったのになあ、とか思いつつ話を続けた。
「ここは一体どこなんだ?」
「そんなもん知らねえよ。俺も来たばっかなんだからよ。……と言いたいがあんたとは気が合いそうだな。俺が知ってるだけの情報を教えてやるよ」
初端から優しい人間にあえて、俺は嬉しい。嬉しんでいる。内心感謝しつつその男の話を聞いた。
「ここは第一層“クラウド・ビギニング”らしいぜ。エーテル・ラビリンスの最初の層で、かつ最初の街さ。あそこにいるガイドのおねーちゃんが言うには、こう言うことらしいぜ」
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