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「ごめんね」
彼女は、最後に微笑み、そう呟いた。
20年、短いようで長い年月を、病室のベッドで過ごした。
けれど、今日で最後だ、もう、彼女は目覚めない。
沢山の人が、彼女を見舞い。
沢山の人が、彼女に励まし。
沢山の人が、彼女を見捨てた。
「仕方がないよ」
彼女は、僕にそう言って、やはり、微笑んだ。
最後まで、彼女は微笑んで、弱音を一切、吐かなかった。
僕、一人だけが残ったけれど、それに意味はない、ただ、諦めが悪かっただけ。
彼女を、一人ぼっちにしてしまうのが怖かっただけ。
僕のエゴ、僕の意志なんて、ちゃんちゃら可笑しい。
単なる、我が儘。
僕は、彼女が好きで愛したかった。
彼女に、僕を好きになってほしくて、愛してほしかった。
もう、終わりだ。
「謝るのは、僕のほうだよ」
永遠の眠りについた、彼女の手を握りしめ、繰り返し。
「ごめんね」と言う。
彼女が、どうして、最後に「ごめんね」
と言ったか、わからない。
後悔だけが渦巻き、僕は冷たくなっていく、彼女の手を握り
「ごめんね」謝り続けた。
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