1 提灯に釣鐘

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そう言うと、そのままサクサク門扉を開けて中へ向かおうとする部長の、腕を思いっきり引っ張る。 「ちょ、待って下さいって! もう少し心の準備が必要っていうか、あの、ああ、手土産も持ってきてないし」 ズーーーンと落ち込む私の顎をスッと持ち上げる部長。 「向こうが来いと急に言って来たんですから君が気に病む必要はないですし、俺の家族なんて大した事ない存在ですから、そんなに緊張する事ないですよ」 「しまぶ」 しますと言いたかったのに、顎を持っていた部長が思いっきり私の頬っぺたを抑えつけたせいでブとか言ったし。 うう~~~! 恨めしい目つきで部長を見上げる。 「俺が好きなのはいつもの君で着飾ったりしてる君じゃないですよ。 もう少し自信を持ったらどうですか?」 ヤレヤレと言った感じで部長が呟く。 嬉しいんだか、悲しいんだかです、部長。 「とりあえず、離してもらえないでしゅか?」 ほっぺを押さえられたまま玄関先で立ち往生なんて変ですし。 抗議が通ったのかすんなり手を離してくれた。 「お腹が空いて、イライラしてますんで行きますよ」 はひぃ。と小さく返事を返した。
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