1 提灯に釣鐘

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平屋の一戸建て。 綺麗に手入れの行き届いた庭。 部長は玄関を開けて『ただいま』と声をかける。 「お邪魔しますぅ・・」 蚊の泣くような小さな声で挨拶をする。 庭同様、玄関内も綺麗だった。 花とか飾ってあるし・・・うちの実家の玄関と大違い。 乱雑に靴が脱ぎ捨てられている実家を思い出す。 「靴を脱がないと上がれない仕組みになってますよ」 いつまでも靴を脱がない私に部長が声をかける。 「わ、分かってます!」 慌てて靴を脱ぎ、部長の靴の横にチョコンと揃える。 それだけで、なんだかむず痒い感覚に陥る。 「あ、お帰り・・・いらっしゃい」 綺麗な女性が奥からやってきて部長と私を出迎えてくれた。 けど、なんか物凄く視線が冷たいんですけど。 ですよね。 こんな得体の知れない人物ですもんね。
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