1 提灯に釣鐘

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カチ・カチ・カチ・カチ 壁にかけられた時計の音と、たまに捲られる紙の音。 ボールペンを走らせる音。 それがやたらと耳に入ってくる。 チラっと視線を上にあげれば、時間外と言う事もあり、背広の上着を脱いで、シャツの腕をまくった部長の姿が目に入る。 私と同じように、机に向かって仕事をしてる姿は、『仕事ができるカッコいい男』の姿だ。 「見てる暇があったら、在庫を合わせて下さい」 こちらを見ることなく発せられた言葉に、心臓が縮む。 小さく『すみません』と呟き、再びチェックする。 ああ、もう、どこで間違えたんだか・・・ 「あ!あった!ありました! 部長、見つけました!」 バーコードの打ち間違いで、ハンドタオルをバスタオルで入力していました!とまでは言いません。 そんな事を言えば、またお説教されるって分かってるから。 訂正を入れ、急いで片づける。 部長は眼鏡を外して、右手で目頭を押さえていた。 「ふぅ・・・毎回毎回、可愛い彼女とのデートの時間を潰してまで付き合ってる私の身にもなって下さい」 「す・・すみません・・・ えっと、部長コーヒー飲みますか?」
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