鉄棒の神様

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ただ私が一つだけ気になっている事がある。 あの少年の存在の事だ。 私はあれきり彼と一度も会っていない。あの坂上がりができたあの日から。 学校の同級生なんかにも彼の事を話したが、誰も信じてもらえなかった。彼と出会ったのは私だけのようである。 今でもよく考える。 彼は一体、何物だったのだろう?……一体、何処へ行ってしまったのだろう?…… 今だに名前も知らない。何処の人かも知らない。 だが私は彼の事をこう呼ぶ。 「鉄棒の神様」と。 あの日、あの時、彼がいなかったら今の私の人生はないだろうから。 この公園にはそういう不思議な思い出がある。
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