第一章 罠にかかった悪魔堕ち

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(…え? なんで、そんな顔…?) 予想外の反応だった。 男の表情は、今までリゼが見てきたものとはどこか違っていた。 それは哀れむようにも、受け入れているようにも見える。 全く意味が解らなかった。 リゼは真意を探る様にじっと男を見つめた。 男は、しかしはぐらかす様に微笑して、 「この地図、大事なものだったのかい?」 いつの間に手にしたのか、男はリゼの眼前で羊皮紙の地図をひらひらと煽って見せた。 数秒の後、反射的に手を伸ばす。 しかし掴む前に上に上げられ、リゼの手は空を切った。 「でもね、いくら大事でも周りは見るべきだ。それに道路に棒立ちなんて自殺行為だ。次からはダメだよ。いいね?」 子供をあやすように言い聞かせ、男はリゼの腰に回していた腕を解いた。 解放され、リゼはゆっくりと向き直る。 正面で対峙すると、男は柔和な笑みを浮かべた。 「私の言葉、わかるかい?」 ゆっくりと、あやすように男は問うた。 リゼは無言で、けれどもきちんと頷いた。 「うん、いい子だ」 柔らかく口端を上げ、男はリゼの頭を撫でる。 拒む理由もなかったリゼは静かにそれを受け入れた。 完全に子ども扱いだと、彼女は理解していた。 けれど、誰かに頭を撫でられたのは、こうして接するのは初めてで。 何だか、ひどく心地よかった。
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