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「あ……ぐ……」
シスターは、必死に耐える。髪の毛が、頭皮ごと剥がされてしまうのではないかという程の痛みに。
「石は、何処にある」
「う……貴方達が……燃やしてしまったでは……え?」
燃やしてしまったではないですか。そう言い切る前に解放され、シスターは呆気に取られたように放心してしまった。
「あ……あの……?」
「…………」
男は手を離した後、じっとシスターを見詰めたまま、黙っている。そして、火を点けたままの葉巻を地面に落とし、踏みつけて揉み消した。
「シスターレイア」
男は静かに一言、シスターの名を呼んだ。底冷えするような冷たい響きに、シスターは思わず、ひっと声を上げる。
「……はい」
「俺は、非常に残念だよ……」
男は、『何故か非常に優しい言葉で』シスターに語りかける。
「あ……う……」
シスターの震えが、これまでのそれとは明らかに違うと分かる程大きくなった。
「貴様はもう少し頭の良い女だと思っていたのだがな」
いつのまにか、男の周りに、男の子分が集まって来ている。何人かは、捕まってしまったのだろう、ぐったりとした子供を、後ろ手に縛り脇に抱えていた。
「次に、嘘を吐いて見ろ。貴様の大切な餓鬼共、一人一人、喉をかっ切る。あぁ、安心しろ。気絶したまま逝かせはしない。大好きな貴様を、最後に見せながら死なせてやるさ」
男は、子分に子供達の目を覚ますように告げた。
「そ、そんな! 子供達に罪はありません! お願いです、どうかそれだけは!」
シスターは必死に懇願する。が、男に指示をされた子分に身体を抑え込まれ、身動きが取れなくなる。
「先ずは、一人」
男は、不運にも最初に目覚めてしまった女の子を、シスターの目の前に乱暴に立たせた。
「うぁ……せ、先生」
「エミリー! だ、大丈夫よ、私が絶対に助けてあげるからね!」
シスターはもがく。しかし、がっしりと掴まれた身体は、女の子の元へ駆け寄る事は出来ない。
「先生……お願い、逃げて」
捕まった時か、強制的に起こされた時か、女の子の顔は殴られ、青く腫れ上がり、口の端は切れてしまっていた。
「ククククク。泣けるな、え? シスターレイア。こんなになってもこの餓鬼は貴様の心配が出来るようだ」
男はさも可笑しそうに笑う。
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