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携帯の画面に映った時計は11の半を指している
この街のシンボルになるようにと建てられた時計台は時を刻むことを忘れてしまっているらしく
金色の針は2本ともが12時を指したまま止まっている。
何が壊れてるのかも不明で、何度歯車を変えても12の文字の所で針が止まるんだそうだ
ただ時刻が12時になると綺麗な鐘の音が響くという。
鐘が鳴るのは1日で2回.....
お昼時を知らせる12時の鐘の音と子守唄のような優しい0時の鐘の音
今は子守唄を唄う時を待っている。
まさか僕が外で姉と知らない人達に囲まれるとは。
呼吸を深く吸うたびに外の空気が肺に染み込むのがわかる。
*
暗い部屋に明るく光るパソコンの画面を
20センチ程の距離で見ている僕の目には
きっと『目』に悪影響であろうと思われるその環境は
傍から見ても自分から見ても引き籠りであるとわかる。
今はただ学校での勉学より、画面に映る勇者の職を得た自分が
何一つ思い出のない街を悪魔の魔の手から守るほうが大切だ。
昔から人一倍、作業を早くこなせる。
人より文を読むのが早かったりタイピングが早かったり
走るのも、まぁ、頑張れば結構早く走れる
小学校の時は運動神経も良くモテたものだ。
中学校の頃から自慢した訳でもないのに、この『能力』が妬まれ始めた
そして高校に入り、今にいたる。
見事なる引き籠もりを貫いており
最近喋ったのは母と姉とネットの勇者仲間くらい。
それ以外の人の声は聞いてない、というか出来る事なら喋りたくない。
ここ数日で一番積極的に喋ったのはゲーム内の女の子かな?
行けることなら画面の中に入りたい。
あれ?今男として、というか
人間として不味い事を言ったような...。
空気の詰まった部屋に「はぁ..」とため息を吐き出した。
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