14人が本棚に入れています
本棚に追加
岡は家電好きで、こまめに様々な新商品のパンフレットを集めては実物を見に行くほどだった。
「テレビの調子が悪くて、今度新しくしたいけど、何がいいのかわからないんだ。だから…岡さえよければ選んでくれないか?」
ある時、岡に相談すると、大はしゃぎでパンフレットを並べ、一緒に店にまで行ってくれた。
俺は岡が選んでくれた商品を迷わず買った。
「今度サッカーの試合あるだろ。おまえん家で見たいな」
「いいよ」
不思議な満足感が芽生えてきた。
岡の気を引けた満足感。
岡とまたさらに親密になれそうな期待感。
(何…この気持ち…)
数日後、夜中に中継される日本代表のサッカーの試合を見に、初めて岡が俺の部屋に来た。
2人で並びビールを飲みながら観戦していると、岡が元サッカー部だったことや小さい頃のこと等を話してくれ、自分が特別な存在なんじゃないかと思えてきた。
その気分が後押ししたのか、俺自身は弱くて飲める方ではないが、その場の雰囲気で飲んだビールが美味しく、後で聞いた話だと、いつもよりかなり陽気に話をしていたらしい。
自分から他人に近づいていけない俺からすると、明るく誰とでも直ぐに打ち解けられる岡に、俺は入社以来憧れを抱いていた。
だから、どんな小さなきっかけでも、もっと一緒に居られるように…
最初のコメントを投稿しよう!