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男の下っ腹に思いっきり電流を、五秒間くらい捩じ込んでやると、男は妙な声を上げ全身を痙攣。
ポキッと折れる枝のように膝をつき、そのままうつ伏せに倒れ込んだ。
虫の死骸と命の旋律。
尊く儚い俯瞰の景色。
私はその男を呆と見下ろしていた。
時折、ぴくぴくっと痙攣させる姿は、陸に打ち上げられた魚のようでもあった。
私は釣り上げた魚を捌きに掛かるため、男を仰向けにする。
馬乗りになり、レインコートのフードを上げ、男の前に素顔を晒した。
男は今にも意識が飛びそうな表情で私を見上げていた。
顔をくしゃりと歪めながら、懇願してるとも取れたが、彼の意見を聞く気はない。
あの子が目覚める前に、すぐ終わらせる必要があったからだ。
ポケットナイフを取り出し、男の顔を左手で固定した。
意識があるだけ可哀相とも思ったけれど、こうでもしないと私は満たされない。だから我慢してもらおう。
口から汚い泡を垂らしながら、最後の懇願。
痙攣ではなく、恐怖からくる震え。涙。この瞬間が、堪らなく愛しい。
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