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「ごめんあそばせ」
だから私は出来るだけ優しい声色でそう囁くと、宝石の切除に取り掛かった。
ジジ、ジ……ジ……
他に誰も訪れることのない路地裏に響き渡る、男のくぐもった呻き声。
微妙に暴れるので、無駄に鮮血を辺りに撒き散らした。こめかみをがしっと掴み、更に力を入れて固定する。
男は最後の抵抗をし続けた。摘出が進むにつれて、壊れたスピーカーのような悲鳴しかあげなくなっていった。
ぐちゃくちゃと下品な音を立てながら、慎重に丁寧に進めた。
慣れた手付きで無事両方くりぬき終えた。掌には硬いゼラチン状の玉が二つ。私の両手は真っ赤にてかっていた。
血生臭い。それでもこれは蜜の香りだ。
媚薬を含んだ甘美な朱。
男からは獸じみた発音しか発せられず、未知の苦しみと、未知の暗さに崩壊しているようだった。
私は早速掘り出した物を指で摘まんで優越感に浸る。
キレイ――本当に。
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