Prologue

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気付けば雨は止み、でかい球体が私の遥か頭上で燦爛(さんらん)と存在していた。 恍惚(こうこつ)を覚える又と無い満月だった。 それに今掘り出したばかりの宝石を重ねてみた。 すると、まるで奇妙な光景が目の前に現れ、ぞくぞくとした興奮が生まれた。 あぁ、出来すぎだ。曖昧な美術作品なんかより、こっちのほうがよっぽど生々しくて、魔的だわ―― 私だけのエメラルド。 十分堪能してから私は携帯電話を取り出した。 ジ……ジジ、ジ……と、街灯が寂しそうに鳴いていた。 梅雨が明ける前の、七月十六日のことだった。 ・
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