stage01:序章

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では……彼の物語を始めようか。 案内役を務めるは私……タダの語り部であれば、名など在りしも無きにも同じ事、不快とは思うが何卒最期まで私の戯れ言にお付き合い頂きたい。 おっと……まず最初に皆様に伝えとかなければならない事項が在った。 この物語は―――あるたった“独つ”の化物の半生を そしてその内訳たる彼の 破壊の為の破壊 復讐の為の復讐 狂々(くるくる)と滞りなく止まる事を知らない抒情的叙事詩(Lyrical Epic)を 焉々(えんえん)と絶えること無く讃えられ続ける螺旋聖譚曲(helical Oratorio)を 斯くも声高に 斯くも怖々と 私が僭越ながら皆様に語り伝えたいと思うような そんな物語――― その物語は時に皆様のココロを激しく揺さぶり……ともすれば打ち鳴らし、ともすれば撃ち倒し……果てには討ち壊してしまうやも知れない だが皆様、怖れることは無い。 悲しみに震える必要は無いんだ。 私が語りたい彼も……そしてまた語り部たる私自身も……救われない物語(バッドエンド)を心底憎むモノ。 故に 彼は必ずや……必ずや悲しみを完膚なきまでに破壊し尽くし 我々に美しい月夜(ハッピーエンド)を齎してくれることだろう。 ……さっそく話がズレたが、続きを語らさせて頂こうか……。 そうだな……まずはこの物語の“正規では無い”……しかし確実にこの物語の中心で在り、今回の事件の華々しい主役(犯)である……彼について話さねばならない。 されど皆様には申し訳無い限りだがこの私……致命的にも語り部で在りながら“語る”のが不得手ときている。 なので、彼に直接御登場願い、今回の事件の発端を私と共に“観て”いくことにしよう。 そう……事件の始まり(ファーストインプレッション)はまずあの出来事からだったか―――
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