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では……彼の物語を始めようか。
案内役を務めるは私……タダの語り部であれば、名など在りしも無きにも同じ事、不快とは思うが何卒最期まで私の戯れ言にお付き合い頂きたい。
おっと……まず最初に皆様に伝えとかなければならない事項が在った。
この物語は―――あるたった“独つ”の化物の半生を
そしてその内訳たる彼の
破壊の為の破壊
復讐の為の復讐
狂々(くるくる)と滞りなく止まる事を知らない抒情的叙事詩(Lyrical Epic)を
焉々(えんえん)と絶えること無く讃えられ続ける螺旋聖譚曲(helical Oratorio)を
斯くも声高に
斯くも怖々と
私が僭越ながら皆様に語り伝えたいと思うような
そんな物語―――
その物語は時に皆様のココロを激しく揺さぶり……ともすれば打ち鳴らし、ともすれば撃ち倒し……果てには討ち壊してしまうやも知れない
だが皆様、怖れることは無い。
悲しみに震える必要は無いんだ。
私が語りたい彼も……そしてまた語り部たる私自身も……救われない物語(バッドエンド)を心底憎むモノ。
故に
彼は必ずや……必ずや悲しみを完膚なきまでに破壊し尽くし
我々に美しい月夜(ハッピーエンド)を齎してくれることだろう。
……さっそく話がズレたが、続きを語らさせて頂こうか……。
そうだな……まずはこの物語の“正規では無い”……しかし確実にこの物語の中心で在り、今回の事件の華々しい主役(犯)である……彼について話さねばならない。
されど皆様には申し訳無い限りだがこの私……致命的にも語り部で在りながら“語る”のが不得手ときている。
なので、彼に直接御登場願い、今回の事件の発端を私と共に“観て”いくことにしよう。
そう……事件の始まり(ファーストインプレッション)はまずあの出来事からだったか―――
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