◆最低男。◆─陽─

1/7
前へ
/168ページ
次へ

◆最低男。◆─陽─

「荒木。ちょっと待ちなよ。」 振り向くと、土田さんが俺を睨み付けて立っていた。 「…なに」 「あんた、どういうつもりか知らないけど。 これ以上ちとせのこと傷付けないでくれる?」 土田さんは腕組みをして、仁王立ちしている。 なんでそんなに偉そうなのかわからない。 キーンコーンカーンコーン… 「あ」 土田さんが時計を見上げ、声を漏らす。 HRが始まる時間だ。 このままここにいたら、遅刻になってしまうだろう。 「…言いたいことはそれだけ?」 「え」 ポケットの中に手を入れる。 いつも必ず、「それ」はここにある。 誰にも知られてはいけない、こと。 〝秘密〟なんて甘い響きじゃない。 俺は土田さんを一瞥し、背を向ける。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加