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◆最低男。◆─陽─
「荒木。ちょっと待ちなよ。」
振り向くと、土田さんが俺を睨み付けて立っていた。
「…なに」
「あんた、どういうつもりか知らないけど。
これ以上ちとせのこと傷付けないでくれる?」
土田さんは腕組みをして、仁王立ちしている。
なんでそんなに偉そうなのかわからない。
キーンコーンカーンコーン…
「あ」
土田さんが時計を見上げ、声を漏らす。
HRが始まる時間だ。
このままここにいたら、遅刻になってしまうだろう。
「…言いたいことはそれだけ?」
「え」
ポケットの中に手を入れる。
いつも必ず、「それ」はここにある。
誰にも知られてはいけない、こと。
〝秘密〟なんて甘い響きじゃない。
俺は土田さんを一瞥し、背を向ける。
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