◆橋本ちとせ◆

5/5
前へ
/168ページ
次へ
ジーっとよく見ると、伏せた目から伸びる長くてふさふさの睫毛。 小さいと思っていた目は、予想以上に大きくて。 切れ長の目に、睨んだような視線。 まるで世界を、全否定するような。 「かっこよかったの!」 「幻じゃん?」 「現実ですー」 みんな、荒木くんを地味だって決めつけてるだけだよ。 わたしの知ってる荒木くんは、かっこいいんだから。 「ふーん。うちには、ちとせの趣味がわかんないわ」 「わかんなくていいよーだ」 ───高校二年、17歳の夏。 わたしの荒木くんへの気持ち。 大切な大切な気持ちが、実るといいな。 暑さに紛れて、わたしの中の勇気や根気を、夏が呼び出してくれそうな気がした。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加