◆すこしずつ◆

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◆すこしずつ◆

「荒木くんっ!おはよ」 いつもの朝。 変わらない日常。 朝の挨拶が飛び交うにぎわった教室。 相変わらず高い気温。 照りつける太陽。 すでに、本格的に夏は始まっていた。 「おはよ」 わたしが荒木くんに満面の笑みで言うと、荒木くんはわたしを軽蔑の目でチラリと見てすぐに目を逸らす。 ………よし。 今日も、挨拶返してくれた。 それだけで満足。 「ふふん、ふーん♪」 鼻唄を歌いながら、教科書や参考書を机の中に乱暴に押し込む。 その時。 後ろから伸びてきた腕に、髪をくしゃくしゃに掻き乱された。 「わぁ!」 驚きの声をあげるとわたしの顔を覗き込む、少しだけ日に焼けた赤い顔。 「おはよ!橋本っ」 「……あ。工藤くん」
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