◆すこしずつ◆

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「工藤くんって、おもしろい」 「え。それって誉め言葉?」 「違います」 きっぱりと言うと工藤くんは八重歯を覗かせて、にかっと笑う。 そう、太陽みたいに。 「じゃ、またあとでな」 「うん」 工藤くんは笑顔を崩すことなく、 友達の輪の中へ溶け込んでゆく。 たちまち、その周囲はざわっと騒がしくなる。 すごいなぁ、工藤くんの存在感は。 一瞬でみんなを笑顔にすることの出来る力を持っていると思う。 「おい、浮気女」 「あ。つっちー、おはよ」 低い声がして振り向くと、つっちーが少し猫背になってわたしを見ている。 その顔は、わたしを睨んでいるようにも見える。
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