第一部― 空蝉の恋

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夏の太陽は都会のビル街を容赦なく照りつける。 ビルの窓ガラス、目の前を行き交う数多(あまた)の自動車のフロントガラスが眩しい。 自動車のクラクションや遠くで聞こえるブレーキ音が都会の喧騒を成している。 白いビルの影になった街角は、 ちょっとした避暑地であり、 騒音も殆ど聞こえない。 私、天野(あまの)カンナは長い黒髪の先にパーマをかけ、化粧と服装もいつも以上に頑張ってきた。 フリルの付いた清楚な白いシャツに紺のスカートを合わせ、 首元には白く光るネックレスを付ける。 今日は蔦遼河(つたりょうが) と初めてデートする大切な日。 絶対失敗出来ない。 だって19年間生きてきて一番好きになった人だから。 ひっきりなしに行き交う車の音の中、かすかにブレーキ音とクラクションが聞こえる。 「待った?」 お洒落な黒いネクタイの付いた灰色のシャツを着て、 黒いジーンズを履いた青年は爽やかな笑顔を見せる。 さらりとした黒髪、きらきら光る黒い眼、薄い唇、雪を載せたような白い肌。 私はこの人の全てが好き。 ずっと一緒にいたい。 車の音と私の鼓動が競い合うように鳴り響く。
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