335人が本棚に入れています
本棚に追加
夏の太陽は都会のビル街を容赦なく照りつける。
ビルの窓ガラス、目の前を行き交う数多(あまた)の自動車のフロントガラスが眩しい。
自動車のクラクションや遠くで聞こえるブレーキ音が都会の喧騒を成している。
白いビルの影になった街角は、
ちょっとした避暑地であり、
騒音も殆ど聞こえない。
私、天野(あまの)カンナは長い黒髪の先にパーマをかけ、化粧と服装もいつも以上に頑張ってきた。
フリルの付いた清楚な白いシャツに紺のスカートを合わせ、
首元には白く光るネックレスを付ける。
今日は蔦遼河(つたりょうが) と初めてデートする大切な日。
絶対失敗出来ない。
だって19年間生きてきて一番好きになった人だから。
ひっきりなしに行き交う車の音の中、かすかにブレーキ音とクラクションが聞こえる。
「待った?」
お洒落な黒いネクタイの付いた灰色のシャツを着て、
黒いジーンズを履いた青年は爽やかな笑顔を見せる。
さらりとした黒髪、きらきら光る黒い眼、薄い唇、雪を載せたような白い肌。
私はこの人の全てが好き。
ずっと一緒にいたい。
車の音と私の鼓動が競い合うように鳴り響く。
最初のコメントを投稿しよう!