寝耳にキス

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ゆっくりと頭を撫でていた大きな手が、 いつもとは違う部分まで伸びる。 顔の輪郭をそっと撫でられ、 くすぐったさで危うく声が出そうになる。 顎の方まで撫でると、 今度は唇に手が伸ばされた。 なんのケアもしてないから乾燥してるだろう。 しかしヤツの手の動きは、あまりにも優しい。 ……3回ほど撫でられた時、 俺は何となく期待してしまった。 そう、寝てる恋人によくある……アレを。 あいつにそんなイケメンなこと出来るのか? 心の中で余裕そうに嘲笑ってるのに、 心臓はバクバクしている。 ねぇ…………伊藤は俺にするの? 「よし、俺も寝るかー。」 ……煩い心臓の音の隙間から、 ありえないほど呑気な声が、頭上から聞こえた。 これが一番伊藤らしいと言えば納得…… でも期待した俺の気持ちはどうなる……! 目を瞑りながらひたすら悶々としていると、 ベットの隣が沈むのが分かった。 あぁ、体温。あったかくて気持ちいい。 悶々とした気持ちは消え、眠気が勝っていく。 もういいや……寝よ……う…… そうして俺は夢の世界に放たれて行った。
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