寝耳にキス

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もやもやして寝たせいか、 意味不明かつ恐ろしい夢を見た。 伊藤に触れられなくなる夢。 そこにいて、目の前で笑ってる伊藤に 何故か触れない。空を切ってしまうのだ。 夢だとは分かっているけど何故か現実的で、 触れない事への恐怖心が増していく。 焦り、不安、孤独…… 「や………やだ……」 早く覚めて。早く起きてと 必死に自分に問いかけていた時だった。 夢の中の触れられない伊藤が、 俺に近付いてくる。 きっと一瞬だけど、 俺にはスローモーションにみえる。 あ、キスされる……… これが現実なら良いのに。 触れられたら良いのに。 そう思った瞬間、あたりは真っ暗になった。 そして訪れる、 柔らかい感触。 うっすら目を開けると、 そこには俺にキスする伊藤の姿が。 三秒間考えて、ようやく現実だと気づいた俺は 驚きのあまり飛び起き……ようとしたのだが、 キスしていた伊藤に頭突きしてしまった。 「いってぇ……!なんだよけーご。」 普通に痛そうだし痛い。 しかしそれどころじゃねぇから! 「な、なななんでお前キスしてたの!?!?」 キスなんて最近してなかった。 ましてや寝てる俺になんて意味不明だ。 「…うなされてたから、 キスしたら目が覚めるかなーって。」 「えっ、俺うなされてたの!?」 「そうだよ!やだやだ、って言って、何か 見てて可哀想なぐらいだったから…つい?」 「………ありがとう?」 びっくりし過ぎて何が何だか分からなったキス。 何だか勿体ないなぁと思ってしまう俺。 今日改めてキスしてわかったんだ。 俺は……伊藤が本当に大事だってこと。 だから……だから俺は毎日でも…… 「………あのさ、けーご。」 (これからは毎日キスしよっか。) 耳打ちされた言葉に、 俺はそっと、優しいキスで答えた。 (寝耳にキスも悪くない。) End.
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