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「芦高さん」
タクシーから出て私に手を振る倉持さんはスーツ姿だった。
「倉持さん、コートは?」
「今日寒くないって聞いたから着てこなかった
返して貰うし」
「でもっ2月ですよ?!」
私は紙袋からコートを取り出して彼にかけた。
「平気平気
じゃぁ乗って」
タクシーの扉を開けて私を中へ促す。
「え?」
「ご飯まだでしょ?付き合って」
この間みたいに私の背中を押してタクシーへ押し込んだ。
倉持さん、これって拉致に近いです。
コートを返すだけだと思っていたから家の鍵しか持っていなかった。
「倉持さん私お財布持ってないです」
「うん」
だから何?って返しをしただけで前を向いてしまった。
薄々思ってましたけど
かなりマイペースですよね。
って言いたいけど言えません。
マイペースっていうか
俺様ですよね、とも言えません。
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