傷に塩

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突然の別れの言葉より 今この状況に驚いている。 「何?」 「え」 人の名前を呼んでおいて何も言わなかった私を彼はにこやかな笑顔で見ている。 くらっ 倉持さんの笑顔の周りにキラキラした光が見えてしまう。 それほどに整った顔。 「あ……いえ、すいません」 私は小さく頭を下げて 屋上から出た。 昼間とはいえ2月の空気は冷たくてカーディガンしか羽織って居なかった私は急に寒さに襲われた。 小さな震えが止まらなかった。 私はいつも 付き合おうって言われて付き合って 別れようって言われて別れる。 恋人から他人に変わるなんて簡単だ。 別れよう たったそれだけで 溝が出来る。 たったそれだけで 赤の他人だ。
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