傷に塩

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「ねぇ、夢 今度舘野さん結婚するんだって」 同期の美紀とランチをしているとき 不意に投げ掛けられた言葉に箸が止まった。 「…………え?」 「さっきね総務に書類とかどうしたらいいの?って来てたよ」 「あ……そうなんだ」 目の前の鯖の味噌煮の定食は 好きなはずなのに急に食欲が無くなった。 「夢、聞いてる?」 「え?」 「今週金曜日空いてる?」 「うん」 「じゃあ空けておいて ご飯行こう」 「…………あ」 舘野さんが結婚する…………。 その相手は私じゃない。 その時私はやっと理解した。 私は二番目の女だったんだって。 『仕事がやりづらくなるから内緒にしような』 始めに彼が言った言葉が浮かんできた。 その時は素直に聞いていたけど 裏にあった思惑は全然違っていたなんて 今更気づいた。
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