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とある地方の町、タクシーの中に一人の男の姿があった。
「はい、丁度3980円ね。何もない所だけど、ここはいい場所だよ。一人暮らし大変だろうけど頑張ってね」
「はい、ありがとうございます。」
その男は運転手にニコリと笑顔を向け、タクシーを降りると目の前に建っている新しくもなく古くもない、ごく普通のアパートに目を向けた。
「…ここが新しい家か」
アパートを見つめながらもポツリと独り言をこぼす。ふと周りに視線を向けると視界に入ってくるのは、昔ながらの家並みや、建ち並ぶ一軒家。鼻から入れた空気は山に囲まれているからか、透き通っているように感じられた。男はその自然を感じているかのように目を閉じている。
爽やかに吹く風が、程よく伸びた黒い髪をなびかせた。風がやむと同時に少し切れ長の大きな目を開く。
「………よしっ!」
空気を味わうかのように大きく深呼吸をすると、アパートの階段をのぼり自分の部屋の前へと向かっていった。
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