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椿は何事もなかったかのように、服を脱ぎ捨て風呂場へと向かう。しかしその際、風呂場の鏡にも自分の姿が映ることはなかった。やはり少し気になるのか、自分の体を確かめるようにペタペタと触っている。
「…なんか映らないってやっぱ不気味だな、髭剃りとかどうしよ…」
やはりどこか抜けているらしい。髭剃りの他に心配するところはないのだろうか。
しかし、強がってはいるものの、やはり本心では得体の知れない状況に恐怖心がないと言えば嘘であった。なぜ映らないのか、鏡の奥へは入れるのか、入れるとしたら中はどうなっているのか─風呂場は無駄に様々な事を考えてしまう。
1日掻いた汗を流し、不安をも一緒に流すかのようにシャワーを済ませると、明日の学校の準備を進める。
椿は引っ越してきたことにより、学校も転校することとなったのだ。明日は4月10日、新学期が始まってから3日後の日。2年生でもあることから新入生ではなく、転校生という扱いになる。
鏡のことを忘れるかのように、新しい学校生活の期待に胸を膨らませた。
持ち物はそんなにないため準備も早々に終わらせると、引っ越しの準備や、鏡のことで体や心の疲れもピークに達したのか、速やかに眠りの世界へと入っていくのだった。
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