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そうこうしている内に僕たちは住宅街を抜けて、目的地へと向かう細い道を進んでいた。
さっきまでの住宅街とは違い、そこに向かうに連れて静けさが徐々に忍び寄ってくる。
外灯の明かりは健在だが、周囲は鬱蒼とした林へと景色は移り変わり、それに気付いた藍那ちゃんも大人しくなっていった。
「みっちゃんは行った事あるの?旧校舎」
先頭を歩くみっちゃんは恐れる事を知らぬと言った背中を見せつけながら、確かな足取りで進んでいく。
「あぁ、子供の頃に何度かな。木造のみすぼらしい校舎だったのは記憶にあるが、廃校になってからは外観を見たくらいだ。いずれ取り壊す予定だとお爺ちゃんは言っていたが、いつになることやら」
「政信さんもなんだか大変そうだね」
政信さんというのはみっちゃんの祖父、創峡学園の理事長、鳳祇川政信さんの事だ。
ちょくちょくみっちゃんの家に遊びに来ていたので、僕も子供の頃からそれなりに知っている人物である。
「そういえばみっちゃん、旧校舎について何かわかった事はあった?」
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