二、夜∽旧校舎

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藍那ちゃんは顔をひきつらせ緑川先輩の腕にしがみつく。 その顔にはもう一切の余裕はないように見える。 「彼女は首を吊って自殺した。けれど強い恨みを持っていた彼女は『生徒達が自分を殺した』ように見せたかった。だから……」 みっちゃんの話し方はこの夜の闇と静寂に驚くくらいマッチしていて、こういう話をさせたら右に出る者がいない。 みっちゃんの怖い話、不気味な話の類いは大した事のない話でも、みっちゃんから発せられる事により不思議な魅力を纏わせてしまうのだ。 この不思議な力を僕は『エンペラーイリュージョン』と呼んでいる。(非公認) 「全身を自ら切り刻んで血塗れだったらしい」 「無理ぃぃっ!無理無理無理無理ぃぃっ!」 藍那ちゃんはついに限界を迎えて自分の耳を押さえ込んですべての音をシャットアウトしてしまった。 「……」
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