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僕は一体何をやってるんだろうか。
過去に飛ばされるという前代未聞の体験をしている最中だというのに、冷静にここで起きている謎に挑んでいるなんて。
そんな重大な事すら二の次となってしまっている自分に、もはや苦笑いするしかない。
まぁでも、ここは僕の知っている過去ではあるが、あの時とは違う一日を歩んでいる事が『過去である』という事実を薄れさせてしまっているのだろう。
「窓が割れている事から見て、ここで鳴ったピアノの音が外に漏れたという可能性は十分に考えられる。先程の音もここから聞こえたものだろう」
「どうしてそう思うのみっちゃん?」
「お爺ちゃんの家でこの学校の見取り図を見つけて、一通り目を通しておいた。この学校の三階に、ここ以外の場所でピアノを置くような場所はなかったからな」
自嘲気味になりながらも僕はしばらくこの場の流れに身を任せる事にした。
こうなった原因を探る糸口が皆無といってもいいくらい少ない現状、他の手だてがないのなら無駄に足掻く必要もないだろう。
そんな事を考えながら少し上の空だった僕の視界の端、見切れるギリギリの範囲に風に揺らめく何かが見えた気がした。
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