325人が本棚に入れています
本棚に追加
/667ページ
となると、つまり僕たちはこのピアノに触れていないという事になってしまう訳で。
『触れてないのに音が鳴った』という事実だけが漠然と残されてしまうという事になる訳で。
「おい!誰だ!今ピアノ鳴らした奴は!」
脅かされて憤った瑠偉先輩が語気を荒げるが、誰しもが首を横に振る。
「ふ、ふざけんな!お前らの誰かが鳴らしたんだろ!」
「いや、誰も触ってはいないようですよ」
「そんな訳ねーだろ」
「事実です。既に一度、ピアノの音は耳にしているはずですが?」
「……」
「先ほども誰が触れた訳でもなく音が鳴った。そして今回も。僕たちがこんなに近くにいるにも関わらず、です」
「幽霊、という線も捨てきれないが、ここまであからさまに怪奇現象が起きると、私としてはそれ以外の理由を考えたくなるな」
最初のコメントを投稿しよう!