第五章

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「あーあ、尚ちゃん菜月ちゃんに取られちゃった。」 沖田がつまらなさそうに藤堂の部屋に入ってきた。 「しょうがねぇじゃん」 「うわ、平助に宥められるなんて…」 「な、何だよ!それ」 言い合いをしていると、桜井の声が耳に入ってきた。 「抱きついたぁ!?」 抱きつくという言葉に、先程の光景が甦る。 「(あれ、嘘じゃないんだよな…)」 「……気になるから見てこようかな」 「あ、ちょ!総司っ」 部屋を出ていった総司のあとに続いて、俺もすぐに出ていった。 桜井はまだ興奮しているらしく、じゃっかん声に落ち着きがない。 「で?敬語無しで"平助"って呼ぶつもりなの?」 「だからまだ思案中なんだって…」 部屋に近づくにつれて菜月の声も聞こえてくる。 「それにこっちはただの平隊士、あっちは組長だよ?」 「ただの…ね…」 「…………」 「そのことで話があって呼んだんだ。」 尚が本題にきりだした。 「あの幻聴のことなんだけど…」 「うん」 幻聴?何のことだ? 藤堂も沖田も耳を襖に済ませ、聞き入った。
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