第一章

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「梅原、一本!」 歓声が上がる。 「(よしっ…!)」 菜月は後ろを振り向く。すると、その視線に気づいたのか、一人の少女が手をふる。 少女の名は桜井尚。 うちがこの世で一番信頼している人物ーー 「お疲れ様」 「次、尚だよね?」 「うん。じゃ、行ってくるね」 尚はそう言うと、前へ歩み出る。 尚の剣道は、すごく華麗だ。しなやかさというか…うまく言えないけどうちは尚の剣道を尊敬してる。だから惹かれたのかな? 「桜井、一本!!」 始まってすぐに一本を取る。 「(はやっ…)」 「うわ、あの女子強いなぁ」 「ん、俺…あの子見たことある。確か…思い出した!個人戦の全国大会でだ!!」 「何!?」 そう、尚の剣道の強さは全国レベル。そこらへんの奴等何かには負けない。 「あっ…」 うちの視線に気づいたのか、先程まで話していた二人が振り向くーー 「梅原…菜月だ」 「なっ…!?」 「(何でうちの名前知ってるんだよ。しかも、フルネーム…)」 考えていたら、後ろから誰かに抱きつかれた。 「っ!!」 「ちゃんと見てたー?」 試合が終わってすぐにこっちに来たのか、尚の頬が赤く染まっている。 「ごめん。ちょーっとよそ見しちゃったかな…?」 「何で疑問系!?」 尚がツッコミを入れたところで、先程の二人が驚きの声を上げた。 「え…まじで!?」 「まさかの、同チーム!?」 勝てるわけないじゃんかよーと、うなだれ始めた二人… うちら二人の話をしてるのがわかったのか、尚が質問してくる。 「何?知り合い?」 「んなけないじゃん」 「ふーん。勝手に人のことペチャクチャ言ってさー迷惑なんだけど?」 最後らへんは、あの二人に聞こえるようにわざと声を大きくしていた。 「ひっ」 「やべっ」 顔を蒼くして逃げ去って行った。
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