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「梅原、一本!」
歓声が上がる。
「(よしっ…!)」
菜月は後ろを振り向く。すると、その視線に気づいたのか、一人の少女が手をふる。
少女の名は桜井尚。
うちがこの世で一番信頼している人物ーー
「お疲れ様」
「次、尚だよね?」
「うん。じゃ、行ってくるね」
尚はそう言うと、前へ歩み出る。
尚の剣道は、すごく華麗だ。しなやかさというか…うまく言えないけどうちは尚の剣道を尊敬してる。だから惹かれたのかな?
「桜井、一本!!」
始まってすぐに一本を取る。
「(はやっ…)」
「うわ、あの女子強いなぁ」
「ん、俺…あの子見たことある。確か…思い出した!個人戦の全国大会でだ!!」
「何!?」
そう、尚の剣道の強さは全国レベル。そこらへんの奴等何かには負けない。
「あっ…」
うちの視線に気づいたのか、先程まで話していた二人が振り向くーー
「梅原…菜月だ」
「なっ…!?」
「(何でうちの名前知ってるんだよ。しかも、フルネーム…)」
考えていたら、後ろから誰かに抱きつかれた。
「っ!!」
「ちゃんと見てたー?」
試合が終わってすぐにこっちに来たのか、尚の頬が赤く染まっている。
「ごめん。ちょーっとよそ見しちゃったかな…?」
「何で疑問系!?」
尚がツッコミを入れたところで、先程の二人が驚きの声を上げた。
「え…まじで!?」
「まさかの、同チーム!?」
勝てるわけないじゃんかよーと、うなだれ始めた二人…
うちら二人の話をしてるのがわかったのか、尚が質問してくる。
「何?知り合い?」
「んなけないじゃん」
「ふーん。勝手に人のことペチャクチャ言ってさー迷惑なんだけど?」
最後らへんは、あの二人に聞こえるようにわざと声を大きくしていた。
「ひっ」
「やべっ」
顔を蒼くして逃げ去って行った。
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