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「……アルバイトもうちょっと入れようかな」
栗色の髪の女の子は絵里の勢いに押されながら、控えめに意見を開陳する。
「ね。ね。田川くんに車で送ってもらおうか?そうすればこのプランで行けるし、車で眠れるもんね。彼の車結構大きかったよね。亜矢、ちょっと聞いといてくんない?」
亜矢と呼ばれた栗色の髪の女の子は、相手の話を聞く時大きく見開く癖のある眼を一度瞬きさせ、店の外に視線を移してから頭だけで頷く。
「よし。じゃあこれはこれでいいとして。現地はどうする?基本的にオプショナルツアーはやめて、自分たちで自由にやりたいよね」
「自由行動って危なくないかな。日本人観光客は狙われるって聞くし」
「その時は、亜矢の得意技の合気道に任せる。遠慮せずにジャンジャンやっつけちゃって」
「ジャンジャンは無理だよ。それに言葉の問題もあるし」
「ドイツ語は亜矢に任せる。イタリアはなんかジェスチャーでイケそうな気がしない?」
「イタリアの方が危ないんじゃないの?」
「大丈夫。いざとなったら大声だすから。鮎川村の大声チャンピオンは伊達や酔狂でやってないよ」
絵里の発言は、どう見ても適当としか評価出来ない。例え大声チャンピオンだと告白されても、亜矢の不安は微塵も解消されなかった。
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