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その日もアーロンはパドックに向かうため馬車を用意させた。サーバインと重役を引き連れ、馬車に揺られている。まだ街道を走っている最中にアーロンは口を開いた。
「なあ、サーバイン」
馬車の中で話しかけられることは珍しいことである。意外に感じてからサーバインは答えた。
「なんでしょうか?」
アーロンはコホンと一つ咳払いしてから、
「子供の喜ぶ食べ物とはなんだろうな?」
サーバインは笑い噛み殺した。
「甘いものなどが好きなのでは」
「そうか――」
ふと宙を見てから、
「ところで、甘いものが食べたくないか?」
唐突に言い放つ。
「そうですね。甘いものを買っていきましょうか」
「うむ」
「ところでパウナちゃんの分も買ってよろしいでしょうか?」
アーロンは口を開くのをためらってから、
「お前がそうしたければそうしろ」
とぶっきらぼうに言い捨てた。
道中でドーナツを購入してから馬車は農村地帯のパドックに到着した。下りるとアーロンはパウナを探した。いつのもようにパドックの門で花を売っているパウナはすぐに見つかった。
「お、おはよう」
ぎこちない挨拶をするとパウナは顔をこちらに向けた。
「あら、おじさまおはようございます」
屈託のない笑顔だ。何故か胸が痛む。アーロンはすがるような目をサーバインに向ける。
「サ、サーバイン」
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