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「わかっておりますとも」
サーバインはドーナツの袋をパウナに持たせると、
「素敵なおじさまから君にプレゼントだよ」
とパウナに言ってからほほ笑みかける。
「まあ! ありがとうございます! でも申し訳ないですわ」
「いいんだよ――」
サーバインの目も優しい。
「おじさま、本当にありがとう」
「フン! いいから早く食べろ!」
パウナは返事をしてからドーナツに口をつけた、お菓子など滅多に口にできないパウナはとても喜びならドーナツを食べ終え、何度もアーロンにお礼を言った。
「アーロンさん、おはようございます。これからトライアローを走らせてみるんですが見ていきますか?」
馬車に気付いた調教師がやってきて挨拶をする。
「そうだな、トライアローに乗ってみるか」
その言葉に調教師は驚いたような表情になった。
「え、アーロンさんが乗るんですか?」
「悪いか? 私の馬だぞ」
「それはそうですが」
アーロンは不機嫌そうな口調で、
「私に馬が乗れないとでも思っているのか?」
「め、めっそうもございません」
慌てて調教師は平謝りする。
「心配するな、軽く流すだけだ」
そう言ってアーロンはパウナの手を取った。
「どうだ、パウナ。私の馬に乗ってみないか?」
「お馬さんですか、ちょっと怖いです」
「心配するな、私が一緒だ」
アーロンは気付いていない――今自分がどんな表情をしているか。まるでパウナを愛おしむように見ているのだ。その光景にサーバインと重役の二人は顔を見合わせている。アーロンの変りぶりにとまどっているが、悪い気持ちではなかった。
「おじさまがいっしょなら乗ります」
パウナがそう答えると、すぐさまコースにトライアローが連れてこられた。
パウナを前に乗せてアーロンはトライアローを走らせる、最初は怖がっていたパウナも風を切る感覚を楽しむようになっていった。
「とても気持ちいいです、馬って初めて乗りました」
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