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「指示した通り地上げ屋を使っているのか? そのくだらん甘さで手を緩めてるのではないだろうな」
サーバインは一瞬押し黙るが。
「指示はしております、ただあの界隈にシャローとキルフォードという名の二人の男に阻まれ難航しておりますが」
アーロンは再び押し黙った。この沈黙が怖い、また不愉快となった時の目を細めるアーロンの癖をサーバインはよく知っている。
「もういい、出ていけ。この件から貴様を外す、しばらく頭を冷やしてその無能さを悔め」
アーロンに無下に言い放つ。サーバインは一度頭を下げてから従順な素振りで退室した。
「あなた、あの子を責めないであげてください。優しい子なの」
ヒルエッタの言葉にもアーロンはつまらなさそうな目をしていた。
「お前が甘やかすから、あのような性根に育つ」
ヒルエッタは悲しい気持ちになったが、それを顔には出さなかった。アーロンをなだめるため必死に説得を続ける、が、
「もう眠る、寝室にワインを持ってくるようにいっておけ」
そう言ってアーロンは部屋を後にした。
ヒルエッタは召使に用を伝えると、サーバインの部屋の扉をノックした。
「どうぞ」
返事を聞いてから部屋に入る、サーバインは椅子に座り打ちひしがれていた。
「お父様を恨まないであげて、可哀相な人なの――子供の頃からお金を稼ぐ方法しか教わらなかったから」
「わかっておりますよ、母上」
サーバインは穏やかにほほ笑む。そうだ母だって耐えている、自分だけ泣き言を言うわけにもいかない。そうサーバインは自分に言い聞かせた。
「サーバイン、あなたは子供の頃からお父様に厳しくしつけられたでしょう、さぞかし辛かったでしょうけど、お父様を恨んではだめ」
「わかっています」
ヒルエッタは少しほほ笑んで、
「あなたは気付いていたかしら?」
「何をですか」
ヒルエッタはすっと目を細めた。
「あの人があなたに社法を教えていたわね、あなたがあの人の説明をすぐ理解したとき、あの人の目がとても暖かくなっていることがあるの」
「――」
「あの人は決して厳しいだけの人じゃないから」
そう信じたかった。生まれながらにしてテンペストを継ぐことを定められた、彼はその運命を呪っていた。いつも思う、自分は父親のようにはなれないだろうと
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