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「あ…ああ。食堂で待っててくれよ!」
不意に上げられたウェルの声に答え、コックは俺達を食堂へ促した。
去り際にマルシェがコックに深々と頭を下げる。
それで漸く恐怖から解放されたのか、コックは笑顔を一つ浮かべた。
「飯じゃ飯じゃ~♪」
鼻歌を交じえ、ウェルは軽やかに食堂へ向かう。
それを苦笑しつつ、俺とマルシェも後を追った。
「お腹すきましたねぇ」
「そうだなー…」
「我はとっくにペコペコじゃ!」
食堂へ着いた俺達は、各々席へ座る。
「お待たせ!メインね!」
それを見計らったかの様にコックは料理を運んできた。
豪華な料理が俺達の目の前に並んでいる。
では…頂くとしよう。
俺達三人は顔を見合わせ、小さく頷いた。
『頂きます!』
声がハモリ、ナイフとフォークを手に取る。
瞬間、コックがニヤリと笑った気がした。
――パカッ…
『え……?』
俺達三人が腰を降ろした椅子、その真下に椅子ごと呑みこむサイズの穴が生まれる。
同時に浮遊感に包まれた。
「くっそおおおおおお…」
「飯がぁぁぁぁぁぁ…」
「キャァァァァァァァ…」
食堂に悲鳴だけを残し、俺達は落下したのだった。
それを確認したコックは一人呟く。
「メインって言ったのになぁ…油断大敵…なんてね」
やかましいわ!
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