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ミツが中に入るとすぐさまスタッフが彼女を捕まえる。
『橘様から伺っておりますので』
そう言われ一瞬目をしばたかせる。橘=レイと脳内で繋ぎ合わせるのに時間がかかったようだ。
一方レイは其のどたばたを気にも留めず支払いを済ませて、フィッティングルームが見える位置で呑気に本を読んでいた。
『れ…れい……?』
か弱いソプラノが聞こえて、活字を追いかける事を止め、視線をフィッティングルームに向ける。
予めレイは、ミツの為にドレスを一着購入していたのだ。
『似合う、かなぁ…?』
銀の髪はそのままに、細い首筋には合皮のチョーカーがはめ込まれ、シンプルな黒いドレスはボートネック、パフスリーブの先には二の腕にぴったりとフィットする体のラインを強調するデザインの袖が肘まで。胸の下できつく絞られ膝の辺りから裾がアシンメトリーになっていて、裏地は濃い緋色。
レイが想像していた以上に其れはミツに似合っていた。
ミツは男というよりは少年のようで、手足は細く全体的に体毛も薄いが為に、裾から覗く脚も美しくドレスがよく映えた。
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