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人や車が忙しなく通り過ぎる大きな通りから少し離れると、細く狭い路地や昔ながらの個人商店や寂れた定食屋があったりする、割と田舎な小さい町。其処にレイは住んでいた。
入り組んだ路地を抜けると現れる小さな広場の前にある、小さな喫茶店がレイの働き先だ。区画整理のミスだろうか、忘れ去られたような空き地はレイが買い取ったために、小さい店と小さな広場は表通りから見えない彼の城。
店は木造を装った作りで入り口にはドアチャイム、付近を植え込みで固めている。そのすぐ傍に『cafe Noir』と書かれた看板があった。
中にはカウンターとスツール、洒落た出窓側には暗い色のテーブルと椅子。頭上の照明は疑似蜘蛛の巣を掛けられたシャンデリア。総てレイの趣味だ。
『レイくーん、今日のお勧めは~?』
カウンターのスツールに座っていたショートカットの女性が、媚びを売る為の甘ったれた声を出す。カウンター内で皿を拭いていたレイが皿を置きくるり、踵を返す。
『さっきクッキーは買ってきたけど?』
レイはお気に入りのアークロイヤルに火を付け、甘ったるい紫煙を吐き出した。煙草はくわえた儘、スーパーの袋に入ったクッキーの徳用袋を取り出す。
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