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夕暮れ時の駅は、人でごった返していた。
仕事帰りのくたびれたサラリーマンから今から遊びに行きます、と顔に書いてあるような派手な服を着た若い男女、だらしなく着崩した制服姿の少女たち……どこにでも在るはずの風景が何か不思議なのは、その通行人の多くが改札前を通り過ぎる時に何かを凝視しているのだ。
視線の先にあるのは細い絹のような長い髪。その持ち主は女性か、黒いロングスカートに黒いブーツで足下を固め、白いスタンドカラーの上品なブラウスを纏っている。やや俯き加減ではあるが恐らく身長はヒールを入れても170前後、割と背は高くスレンダー美人タイプ。
その髪の色に、品在る雰囲気に皆が見とれる。尤も本人はそれに気付いていない手元にある本に集中している所為か。
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