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 透けるように白い指先が羽織っているショールのずれを時々正す。本にも飽きているのか時折改札口に視線を投げてはまた、寂しそうに本へ視線をやり、綺麗に塗られた黒いマニキュアの指先がページを送る。  一人の、勇気在る男が通行人を分け入って現れる。如何にも今風の、どこにでも居そうな彼はスタスタと歩を進め、銀髪の彼女の目の前に立つ。  男はパーマのかかった茶金の髪をいじりながら声を掛けた。 『え、もしかして暇?誰か待ってんの?』  男の声に彼女は顔を上げた。銀糸の髪がたわみ、腰へと流れを作るのが印象的だ。  小振りで形のいい薄紅の唇に雪のような肌、やや垂れ気味の目元には長い睫がうっすら陰を落とし、さながら人形のようにも見える。  少し長めの前髪をかきあげながら片手の本を閉じ、肘に掛けていたミニボストンを持ち直して…… 『何か?』  柔らかく甘い、細い声をしていた。まるで少女のようで。  声を掛けた男は髪をいじる手が無意識に止まっていた。心中で『声かけてよかった!』と雄叫びをあげる反面、次のセリフが浮かばないのだ。
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