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 坂道はとても緩やかで、荷物を持っていたりヒールの靴を履いていなければさほどに感じないだろう。今日みたいな春の日にならば、散歩にだって丁度良い位で。  レイが煙草を投げ捨てる。それを見て小声で叱りつけるミツ。  二人が目的地に着いたのは、駅から僅か20分程度の場所。住宅街、というほどでも無く、商店街とも取れない曖昧さを持ち合わせた通りは、やはり二人以外に人の姿は見えない。  目に付いた煉瓦造りの大きなお屋敷風の建物は、赤煉瓦にモスグリーンの蔦が絡まり、屋根に乗せられた風見鶏は錆びている。  その向かいの打ちっ放しのコンクリートの外装が目に付く建物の一階はアンティークショップらしく、照明こそ落とされてはいるがショーウィンドウの向こうには様々な物が飾られている。 『ミツ、行くよ』  軽く手を引かれ慌てて進む先はそのアンティークショップの脇にある螺旋階段。壁と同じく足場はコンクリートで、黒塗りの鉄製手すりと囲いが冷たく光る。
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