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とある城の地下室。
蝋燭の僅かな灯火のみで照らされた室内は、ただただ薄暗く。長年使用されていなかった為か、黴の臭いが立ち込めていた。
そんな居心地の悪い場所の真ん中に、一人の乙女が立っていた。
乙女は虚ろな眼差しをしている。何を考えているのか、てんで検討もつかぬ無機質な眼差しだ。
腕も足も胸囲も腰回りも細い、とても貧相な体躯に、目も眩むような宝石が散りばめられた美しい衣服を纏う乙女は、不釣り合い過ぎて滑稽に見えた。
乙女は大きく深呼吸をし、黴臭い空気を肺に取り入れ、長く伸びた漆黒色の髪の毛を掻き上げる。
すると、先程まで生気の見えなかった双眸に不気味な光が宿った。
「あは。そろそろ御仕事ね」
嗜虐的な微笑みを顔中に広げ、乙女は静かに呟いた。
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