レキとシンラ

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「んなっ…子供…!?」 店と民家が建ち並ぶ中、一つの民家の横で倒れている一人の子供がいた。 「――――…行き倒れ、か?」 少し離れた場所からよく見ると、それは十歳くらいの少年だった。赤みを帯びた茶色いボサボサの髪を一つに束ね、着ている着物もボロボロで、身体中土まみれな少年は、横になったまま動こうとせず、ジッと黙ったままだった。微かに上下する肩で、生きていることはわかる。 (…誰も…見てみぬふりかよ…。) 人通りは多く、陰になっているとはいえ気づいている人もいるだろう。しかし誰も少年に手を差し伸べることも、声をかけることもせず、何も気付かなかったかのように素通りしていく。 (―――…これだから都の連中は!) 男は通り過ぎていく町人に憤りを感じながら、少年の元へずんずんと歩を進める。近づくにつれて少年の顔がはっきり見え、目を閉じて眠るように横になっていることがわかった。
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