僕と俺

15/33
29659人が本棚に入れています
本棚に追加
/1609ページ
「何を言ってるんですか。 貴方は、命懸けでその能力を手に入れたんでしょう? 決して、努力をしなかった訳ではないのでしょう?」 理事長の言葉に、俺は顔を歪める。 「まあ・・・・・・・そうですが・・・・」 「だったら、良いではありませんか」 そう言って、俺に笑顔を向けてくれた理事長に、俺は少し救われた思いがした。 反則技の記憶能力とか・・・何となく罪悪感を感じていたのかもしれない。 だが、理事長の言葉で少し楽になった気がした。 俺は頭を下げて言った。 「ありがとうございます。理事長。じゃ。俺は教室に戻りますね」 理事長は頷いて言った。 「ありがとうございました。藤堂君。助かりましたよ」 俺は頭を下げて、応接室を後にし教室に戻った。 教室では、自習になっており全員が席に着いてプリントをしていた。 奈々から鞄を受け取り、そのまま席に着こうとして溜息をついた。 俺のプリント? ああ・・・・・・粉々です。 奈々も初めて気がついたんだろう青ざめていた。 俺はにっこり笑って、Vサインしてやった。 それで判ったんだろう。 ほっと息を吐いていた。 俺は粉々のプリントを手で握り締める。 そのまま、身体で覆う。 そして身体を起こした時には、机の上には綺麗なプリントがあった。 満面の笑みで俺の方を見ていた山田や野中達は青ざめた。
/1609ページ

最初のコメントを投稿しよう!