1章 はじまりはじまり

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とある夏の日、音楽を聴きながら広い道を歩いていく男がいた。 少し乱れた短めの髪に薄手の白いシャツ、黒のジーンズ、重そうなカバンをリュックサックのように両肩にかけているという、如何にも大学生のような格好をしたその男だが向かう先は大学ではなく予備校。 つまり、受験に失敗してしまった浪人生であった。 「…暑いなぁ。本当に暑い。太陽少し有給でもとってくれないかなぁ」 などとぼやきながら、一歩一歩予備校に向かって歩いていくその男-菅原道真(スガワラ ミチザネ)は、学問の神様と同じ名前ながらも学問の才能はさほど無かったらしく、これで2度目の受験生の夏を過ごすことになってしまったのだ。 今年こそ志望校に受かり、この勉強漬けの毎日から脱出することを願いながら- 奇しくも、その願いが叶うことになる。    ・・・・・・・・・ そう、思ってもみない形で
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