拾壱

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広間へ行くと、全員が厳しい顔をしていた。 桜と平助もその中に座る。 「集めたのは他でもねぇ。山南さんの今後についてだ」 「だよな……。まさか総長が化け物になっちまったなんて、隊士達に知られる訳にはいかねぇよな」 「隊士だけじゃねぇ。羅刹について知らない伊藤さんから山南さんを隠さなきゃいけねぇ」 土方と左之の会話に皆が難しい顔をする。 「隠すったって、こんな狭い屯所じゃ何も出来ねぇぞ」 「あぁ」 永倉の言葉に土方は頷く。 「となると……」 黙っていた斉藤が口を開く。 「西本願寺への移動を急ぐしかねぇな」 「だよな……」 土方の言葉に左之も同意する。 他の面々も異論は無いようだった。 ただ桜は 『あんなに反対していた山南さんの事がきっかけになって決定になるなんて……』 なんとも皮肉だと思った。 しかし他に十分な広さがあり、条件を満たす場所は他に無いため、桜も賛成した。 それから早急に西本願寺への移動について始められた。 山南については、浪士に斬られ死亡したという事になった。 その知らせに出張から帰ってきた伊藤を始め、新選組の隊士達に大きな衝撃を与えた。 "仏の総長"の死は沢山の人に偲ばれたのだった。 そうして新選組は西本願寺を新しい屯所とした。 新たな問題を抱えたまま、新しい新選組の生活が始まったのだった。
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