拾壱

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「山南さん……」 初めて聞く彼の悲痛な声に千鶴は胸が痛かった。 「しかし……これがあれば私は再び刀が握れる」 「え?」 山南の言葉に、彼の手の中にある物を見る。 「それはっ!!!」 山南が握っていた物。 それは― 赤く光る"若変水"だった。 そして山南は素早く蓋を外し口元へ運ぶ。 「駄目です!山南さん!!止めてください!!!」 慌てて千鶴は山南の元へ駆け寄る。 しかし一足遅く、彼の喉が上下に動いてしまった。 「山南さんッ!!!」 千鶴の大きな叫び声が響く。 そして次の瞬間 「ぐあぁああぁあぁ!!!!」 「山南……さん……」 叫び声を上げる山南の姿がみるみる"羅刹"のものへと変わっていく。 真っ白な髪― 真っ赤な瞳― 「あ……あ……ぁ」 千鶴はその姿をただ呆然と見つめるしか無かった。 今、自分の目の前で人が化け物へと変わったのだ。 「あぁああぁあぁ!!!」 なおも叫ぶ山南に、千鶴はただただ彼の名前を叫び続けるしか無かった。
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