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「山南さん……」
初めて聞く彼の悲痛な声に千鶴は胸が痛かった。
「しかし……これがあれば私は再び刀が握れる」
「え?」
山南の言葉に、彼の手の中にある物を見る。
「それはっ!!!」
山南が握っていた物。
それは―
赤く光る"若変水"だった。
そして山南は素早く蓋を外し口元へ運ぶ。
「駄目です!山南さん!!止めてください!!!」
慌てて千鶴は山南の元へ駆け寄る。
しかし一足遅く、彼の喉が上下に動いてしまった。
「山南さんッ!!!」
千鶴の大きな叫び声が響く。
そして次の瞬間
「ぐあぁああぁあぁ!!!!」
「山南……さん……」
叫び声を上げる山南の姿がみるみる"羅刹"のものへと変わっていく。
真っ白な髪―
真っ赤な瞳―
「あ……あ……ぁ」
千鶴はその姿をただ呆然と見つめるしか無かった。
今、自分の目の前で人が化け物へと変わったのだ。
「あぁああぁあぁ!!!」
なおも叫ぶ山南に、千鶴はただただ彼の名前を叫び続けるしか無かった。
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